『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』一ノ章、いかがでしたでしょうか。アニメ『半妖の夜叉姫』を、椎名史観バイアスで再構成した「異伝」としてお楽しみいただけたら幸いです。
例外はあるものの、コミカライズにはアレンジがつきもので、なぜかというとまあたいていはページ数の都合です。映像作品のシナリオ情報量は漫画に翻訳すると分量がかなり多いため、物語の再構成は避けられません。そしてアレンジには担当漫画家の作家性や解釈が出るわけで、そこがコミカライズの面白いところです。
私が自分の切り口にしたのは、とわちゃんが「現実世界に迷い込んでしまった、物語世界の住人」であるという視点。そして『犬夜叉』ワールドを「我々が本来けして行くことのかなわない、憧れの物語世界」として描くこと。物語・フィクションを愛するファンの気持ち、さらに言えば高橋留美子先生の漫画に憧れる私自身の気持ちを託したわけですね。
で、たとえば原作アニメでは、希林先生は英語担任です。これはとあるキャラクターの見識の広さを反映してのことなのですが、冒頭にどうしてもあの和歌
「春の夜の 夢の浮橋 とだえして
峰に別るる 横雲の空」
(藤原定家『新古今和歌集』)
を入れたくて、コミカライズでは古文担当に。そうすることで「あなたも『犬夜叉』世界に通じる<橋>をもう一度架けたいでしょう?」と読者に問いかけるイントロから始めたかったのです。
しかもこの歌、いわゆる「本歌取り」なんですよ。元になった歌があって、そのオマージュ。さらに『源氏物語』の最終章『夢浮橋』ともかけてあってですね、「過去の傑作への恋文」という趣もあるという。もうこのコミカライズの導入にぴったりすぎて。
他はだいたいページ数を詰めるための調整ですね。月刊誌漫画として1話目に必要な要素を、必死で選んでまとめた結果です。現実世界での居心地の悪さを表現するため、前半のとわちゃんにはガブ女の制服を着てもらい、「目が怖い」「目力」というキーワードでキャラをざっくり説明。さらに状況を集約するために後半に連結するエピソードはあのような形にアレンジ。思いがけず芽衣ちゃんが私の意図を的確に汲んでいい仕事してくれたこともあり(笑)、1話目で姫たちが出会って戦国時代に行くところまで持っていきつつ、日暮家の暖かさもコミカルに出せたのではないかなーと。
怖すぎる三つ目上臈さん(笑)は、短いページ数で「現実と物語世界の境界の崩壊」を表現するために、あれくらいのインパクトは欲しかったので。うっかり読んじゃったちびっこには、一生残る恐怖で一生残る愛と勇気をね〓〓 もろはちゃんの第一声を犬夜叉先輩のセリフとダブらせたのは我ながらファインプレーだと思ってるんですが、三ツ目上臈さん怖く見せるためにちょっと大きく描いたんで、言うほど雑魚には見えないですね(笑)。
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