天生牙を使わなかったということ:サンデーS 2024/08月号
2024-06-25



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 犬夜叉・かごめ・りんとの再会を描いたことでここで言いたいことがだいぶ成仏してしまい、3ヶ月ぶりの更新です。物語はいよいよ最後の戦いに向けて爆進中。

 アニメの「せつな死亡」「折れた天生牙では救えない」「とわの妖気の刃でなら」という流れは、とわが後継者として父親と肩を並べるための通過儀礼です。が、漫画では天生牙折ってる暇がなかったため、双子が力を合わせて斬星剣を進化させるという形に置き換えました。これによって双子の両方、ひいては殺生丸の成長という物語の核心要素を一点に凝縮。翡翠と琥珀が同行してることの意味・役割もここだろうということで、二人のどちらかにせつなに代わって死んでもらうことに。

 イヌヤシャーロキアンなら琥珀がもう生き返れないことは常識です。翡翠は『犬夜叉』最終話で生まれたキャラですから、ハッピーエンドの象徴でもあり「それが死ぬとかありえねえだろ!」と思います。ということはこれは翡翠の仕事ですね(論理的帰結)。『夜叉姫』はある意味『犬夜叉』のハッピーエンドを覆すところから始まる物語ですが、私はこれを「あのハッピーエンドがたとえ壊れかけたとしても、彼らはきっとそれを修復する」という主題として受け入れました。姫たちは単なる二世キャラではなく、我々読者の「『犬夜叉』の世界とキャラクターたちへの想い」を背負ってるんです。なので私の『夜叉姫』では翡翠が死にかけて、姫たちがそれを救う。

 それともうひとつ、翡翠の死と復活で、琥珀がたぶんなんか吹っ切れたと思うんですよね。常に「正しい死に場所」を探してる風なのがコミカライズの琥珀でしたが、翡翠の死を目の当たりにして叫んだとき「本人は満足でもこんな思いを誰かにさせちゃあかんやろ」ってなって、ようやく執着から解放されたんじゃないかな。翡翠は確かにハッピーエンドの象徴だけど、それを言ったら琥珀だってそうなんですよ。「死ぬんじゃない、お前は義兄上と姉上の宝なんだ」という叫びは、そのまま彼自身にも向けたセリフとして書きました。

 さらにここから麒麟丸とりおんのシーンにつなげると「同じ救いを得ることができなかった者」とすることができます。彼の「世界を滅ぼしてでも」という動機にも説得力が生まれました。
 子供を失うのはおそろしく辛いことで、それを真剣に描くのはキツいです。なのでりおんは復活した途端元気に「お父さまはダメな人です!」と言う方向に(笑)。桔梗の復活シーンをオマージュした絵はりおんの幼い外見だとちょっと背徳的すぎる気がしないでもないんですけど、そのくらいの方が戦国御伽草子らしい禍々しさが出てるかなと。高橋先生の作風はかなり生々しくエロい絵面がしれっと入ってくるのに、なぜか「邪念を抱かず受け入れなさい」という強制力オーラがあるのが凄いです。これは私ごときには真似できないので、いちおう単(ひとえ)を羽織らせました。


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